大判例

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東京高等裁判所 昭和54年(う)37号 判決

被告人 清水博志

〔抄 録〕

所論は、日本自動車販売は本件自動車を被告人に売渡した以上、自動車の売買代金等の支払いを受けられれば、それで足りる一方、被告人は本件自動車の引渡を受け、これを全面的かつ排他的に使用する権能を有するに至ったと認められるところ、被告人の本件所為はかかる月賦購入者としての地位を担保に提供したに過ぎないもので、被告人自身の権利を処分したにほかならないから、刑法二五二条一項にいう「他人ノ物」を横領した場合に該当せず、また、日本自動車販売に留保された所有権の実質は、いわゆる権利が外部的にのみ移転する類型の譲渡担保権とみるべきであるから、これを処分する行為は横領罪にあたらないと主張するが、本件自動車に対する被告人の権限の範囲については、その売買にあたり被告人と日本自動車販売との間に締結された契約内容に基いて判断されるべきが至当であるところ、前段説示のとおり、右契約条項によれば、本件自動車の売買代金が完済されるまでは、被告人に対する自動車の所有権の移転はなく、依然日本自動車販売に帰属するものである旨明定されているのであるから、その間、被告人にこれを処分する権限のないことは疑いがなく、右自動車を目して刑法二五二条に規定する「他人ノ物」というにさまたげなく、また、日本自動車販売に帰属する右所有権は実質的にも譲渡担保権と同視することは正当といえず、被告人において右代金完済までは、本件自動車を売主のために善良な管理者の注意をもってこれを保存すべき義務を負い、勝手に処分することは許されないのであるから、万一借金不払の時は右自動車を右宋に無条件で譲渡し、借金の弁済に充当されても異議はない旨の念書を差し入れて、ほしいままにこれを同人に譲渡担保として引渡し、日本自動車販売の所有権の実効性に障害を与えるおそれのある処分行為に及んだ被告人の所為は、結局その所有権を侵害した行為にほかならないというべきであるから、横領罪を構成するものと解すべきであって、所論が種々主張するところはいずれも独自の見解というべく、これを採用することはできない

(四ツ谷 杉浦 阿蘇)

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